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「頑張らなければいけない」空気に、人が組織で取り囲まれる怖さ-渡辺美樹氏、木村剛氏を観察した私の経験から - 石井 孝明
CATEGORY : [未選択] 2012/03/20 20 : 31
ワタミ、素晴らしい会社だと思うが…ー出来すぎるトップの功罪





もう旧聞に属する話かもしれないが、ワタミグループで、長時間勤務を繰り返した26歳の女性社員が08年に自殺した問題で、今年2月に過労による労災認定が下りた。とても気の毒な話で、亡くなった女性に心から哀悼の気持ちを表明したい。



ワタミの創業者で現会長の渡辺美樹氏の以下のツイッターが事件に波紋を広げた。



“労災認定の件、大変残念です。四年前のこと 昨日のことのように覚えています。彼女の精神的、肉体的負担を仲間皆で減らそうとしていました。労務管理できていなかったとの認識は、ありません。ただ、彼女の死に対しては、限りなく残念に思っています。会社の存在目的の第一は、社員の幸せだからです。



「社員の幸せ」「労務管理できていなかったとの認識はない」という表現に戸惑った。この事件の細かな事実関係を私は報道以上に知らない。渡辺氏は誠実な方なのだろうが、このツイートは残念だった。



ただし、こうした悲劇が渡辺氏の周囲に起こりやすい状況であったとは、推測できる。私は渡辺氏には2度、記者として取材で面会したにすぎない。その感想を述べてみよう。とにかく「すごい人」だった。



私はオカルトを信じない人間だが、彼からは明るい「オーラ」、エネルギーを感じた。本当の心は見透かせないが、知る限り善意にあふれたよい方だった。言葉と行動が遊離していません。この外食不況化で、損益を均衡させることは素晴らしい経営手腕だ。



しかも取材した記者に、サイン入りのお礼の手紙を送ってきた。もちろん、皆にそうしているのだろうが、気配りにも驚いた。経済界で、彼を悪く言う人はいない。



別件で渡辺氏だけではなく、ワタミも取材したが、立派な会社だった。社是は渡辺氏の考えた「地球上で一番ありがとうを集める会社になろう」というものだ。働く人は礼儀正しく、自分の仕事を誇らしげに話していた。



働くことに追い込む上司と組織「私と同じように頑張れ」



しかし、渡辺氏について、いろいろ考えさせられる出来事があった。彼の創業から最近まで幹部にいた方と、中堅幹部でワタミを退職した方とも別件で話したことがある。以下、内容を少しぼかす。



2人とも渡辺氏のことは決して悪口は言わず、尊敬の念を示していた。ですが、社内のことには言葉が少なかった。2人とも会社を去った。幹部は過労のようだが、病気になって退職していた。



渡辺氏は気配りが細かく、仕事の詳細な報告を求める。苦労する社員に渡辺氏は、正論で諭し、そして励ますそうだ。「頑張れ、君ならできる。俺だってやり遂げたんだ」と。これはきつい言葉だ。



渡辺氏のような、仕事のできる「完璧人間」には、誰もがなれないだろう。辞職の理由をこの2人の退職者は口を濁していたが、おそらく完璧人間と一緒にいて疲弊したのだろう。しかも、相手が「正しい」ので、それを他人に言うと、弁解じみて聞こえるから黙ってしまったのだと思う。おそらく完璧な渡辺氏はこうした普通の人の苦しみを、理解できないのではないか。





実は、私も同じ経験がある。私は雑誌編集者、記者として、金融コンサルタント、そして日本振興銀行元会長の木村剛氏の下で3年働いた経験がある。彼は破綻した銀行の検査妨害で逮捕されたが、私は銀行のことは何も知らない。わざとさわらなかった。



余談ながら、木村氏は社会に誤解を受けることが多かったが、私の知る限りでは日本経済のことを真剣に憂い、世の中を良い方向に変える使命感を持っていた。また振興銀行事件で彼が逮捕されたのは、微罪の検査のメール隠し。彼は裁判で罪を認めているようだが、多分裏があるに違いない。なぜなら彼のように頭の切れる人が、こんなすぐ摘発される幼稚な手口の犯罪をするとは思えないためだ。



木村氏は渡辺氏とはスタイルで違う点が多いのだが、同じように仕事ができ、正論を掲げ、突き進む人だ。しかも「大義」を掲げる。そして私は今でも木村氏を、批判と尊敬の両面を持つ。自分の力の及ぶ範囲で懸命に働いた私は、ワタミを辞めた2人のように疲弊した。そして自分で会社を作って辞めてしまった。上述の2人の分析は、私自身に当てはまることだ。



同調圧力が組織に加わる-状況に人間が支配されないために



冒頭の例の女性が過労自殺するほど思い詰めた状況は部外者にとって、不思議に思える現象だろう。池田信夫氏が、「モラルハザードと勤勉革命」という興味深いエッセイで、日本企業が「低賃金、長期労働なのに現場の労働のモラルハザードが起きていない」という不思議な状況を分析し、その理由を日本の社会構造や歴史にもとめている。これは日本社会で特に観察される組織の特徴のようだ。



もちろんその考えは一面で正しいだろう。ただし、私は16年間記者をやり、「長期労働」「低賃金」なのに努力を重ねてしまった。特に木村氏と共に働いた3年半は、さまざまな経験と自らの実力が成長ことや良い記事を書けたという記者の仕事の喜びを感じた。同時に大変な疲労をした。そしてさまざまな企業や組織、そこに属する人々の「出世」と「没落」を外から見てきた経験がある。



成果を出している組織には一体感、そして勢いがある。それが成長とか、大もうけ、成功などの成果によって生まれる場合がある。しかし、それは個人でも、組織でも消えやすいものだ。賢い組織の創立者は勢いをコントロールしようと、理念を重視して組織の中に埋め込んでいく。それが、渡辺、木村氏のようにトップの個性が濃厚に反映された形で出る場合がある。



ワタミは、渡辺氏のビデオメッセージを頻繁に各職場に送り、理念研修を年何回か行い、理念を植え付けるミーティング、研修文章の配布を繰り返すという。私の上司だった木村剛氏は、いつも熱く、日本経済や金融の未来について語っていた。そうした中で高揚した感覚に働く人は、包まれるのかもしれない。現に私はそうだった。



しかし、それは長続きしない。働く人は疲弊してくる。同調することそのものが苦痛になってしまうこともある。人間的な迫力に満ちた上司に迫られた場合にはなおさらだ。



ワタミの例で示した女性社員の状況は明確ではないが「しなければならない」という命題に満ちた組織に取り囲まれた時に、彼女は逃げられなくなってしまったのではないか。私やワタミの社員がそう感じたように。「人間が状況を支配できるのは一瞬のみ。残りは状況に人間が支配される」(ニコロ・マキャベリ、フィレンツェ・ルネサンス期の政治思想家)。私たちは集合意志に取り込まれてしまう。



一つ心配なことがある。最近の20代、しかも最良と思える人々と会うと「しなければならない」という言葉を頻繁に聞くようになったのだ。「人生は意義がなければならない」「良い仕事に就かなければならない」。「大企業に就職しなければならない」というのも就活の人に多いそうだ。日本社会に余裕がなくなっているのだろう。



理想を掲げ、人々が熱心に働く組織や会社、それを経営者がいてもいいと思う。しかし、それに同調しない人々がいてもいい、余裕のある社会、会社はできないだろうか。そして、もし苦しんでいる方が言いたい。



「あなたは十分頑張っている。手を抜いていいのではないか」と。



経済ジャーナリスト 石井孝明 ishii.takaaki1@gmail.com



(石井 孝明)





(この記事は経済総合(アゴラ)から引用させて頂きました)



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